一六タルトとはどんな和菓子か
一六タルトは愛媛県松山を代表する銘菓です。「一六(いちろく)」という名前は一六タルトの発祥である「一六本舗」という店名から取られています。もともとは一六本舗で発明されたお菓子であるとはいえ、「タルト」自体は愛媛県で広く販売されており、販売する店舗によって商品名が異なります。「タルト」という名前やロールケーキのような見た目から洋菓子を想像する方がおられますが、あんこを使った伝統的な和菓子です。「愛媛タルト」、「松山タルト」のように地名を付けることで、洋菓子の「タルト」との区別がなされています。
和菓子なのにタルトと呼ばれているのはなぜか
では、和菓子でありながらタルトと呼ばれているのはなぜでしょうか。その答えは、江戸時代初期に松山藩の藩主である松平定行公が、長崎でポルトガルのお菓子であるタルトに出会ったことと関係しています。初めて口にした南蛮菓子タルトの味に魅了された彼は、松山に帰ったあと菓子職人にタルトの味と製法を伝えました。もともとのタルトはカステラの中にジャムを巻いたものでしたが、定行公はあんこを使って現地風にアレンジした餡入りタルトを作らせたようです。その後、明治以降に松山の菓子職人たちの間で技術が伝わっていき、タルトは松山だけにとどまらず四国の名菓となりました。
一六タルトの魅力
一六タルトの人気を支えているのは何と言ってもこだわりの餡作りと生地作りです。まず、一六タルトに使用されている餡の特徴は、四国産の柚子を使って新鮮な風味を出していること。じっくり時間をかけて炊き上げ、しっとりとなめらかな口当たりに仕上げた小豆餡に柚子の香りを混ぜ込むことで、さわやかな食べ心地を実現しています。そして、餡を包んでいる生地はたまごと砂糖と小麦粉だけを使い、食べ飽きないように工夫してあります。やわらかなスポンジ生地であんを巻いているのでカットが難しいと思われがちですが、一六タルトはあらかじめ食べやすいサイズにカットしてあるのが定番です。