和菓子のバリエーションは広く、近年では西洋のスタイルを取り入れた、新しい感覚の和菓子も多く登場しています。こうした新たな風潮の中にあって、古都京都では昔ながらの伝統製法を守っている、正統派の和菓子も健在です。
亀屋陸奥「松風」
西本願寺の近くに店を構える亀屋陸奥は、応永28年(1421年)の創業。室町時代から続く老舗中の老舗・亀屋陸奥の「松風」は、何百年にもわたって京都の人々から愛され続けているお菓子です。
一見すると固めのカステラのように見えますが、小麦粉に砂糖と麦芽飴を加え、さらに白味噌を混ぜこんで自然発酵させた生地に、ケシの実を振りかけて焼き上げた発酵食品です。弾力のある生地は、白味噌の香ばしい香りと甘みがあり、かみしめるほどに奥深いうまみが口の中に広がります。
緑寿庵清水「金平糖」
弘化4年(1847年)創業の緑寿庵清水は、手作りの金平糖作りにこだわっているお店です。現在、機械ではなく手作りで金平糖を製造販売しているお店は、日本でただ一つ、緑寿庵清水だけ。とても貴重なお店です。
金平糖は繊細なお菓子で、優れた職人技でなければうまく作ることはできません。気温や湿度にも大きく左右されるので、日々五感を研ぎ澄まして、金平糖の状態を見極めつつ作っていきます。緑寿庵清水の金平糖は一子相伝の技として受け継がれており、一人前の職人になるのに二十年かかるといわれています。
そして金平糖作りは手間暇がかかります。1種類を作るのに、およそ16~20日かかるそうです。緑寿庵清水では60種類以上の金平糖を、熟練の職人が丁寧に手作りしています。
小袋入りの定番商品はイチゴやミカン、レモンなどのフルーツを使ったものや、昔懐かしい肉桂味、ショウガ味など13種類。このほかひな祭りや端午の節句など季節の行事に合わせた限定商品、各種詰め合わせなど、バリエーション豊かです。その中でも特に注目なのが、「究極の金平糖」です。製法の難しさからほんのわずかしか作れない珠玉の逸品。毎年、注文が殺到します。